■ テーマ提供事業者インタビュー第5弾
第5回タテシナソンではリンゴとお米を主に生産している、信州関農園株式会社さんがテーマ提供事業者になりました。ガイドを経験した関さんだから感じた違いや、テーマに取り組むチームと向き合っていく間で触れた学生の思いなど。今後のタテシナソンへの思いも含めて関さんに伺いました。(タテシナソンのリアル ガイド編はこちら)
■ タテシナソン2023テーマ提供事業者「信州関農園株式会社」関 陽一さん
信州関農園株式会社 関 陽一 さん
業態:農業(りんご・米)、加工品製造
関さんからのテーマは「ブランディングを成功させる為の日本一の称号が欲しい!」。家業を継承して以来、事業拡大をしていきたい関さん。ただ、立科町、また、長野県の名産である「りんご」は生産量では2位止まりです。事業を拡大しても商品が売れなければ成長は見込めません。ブランディングに繋がるアイデアを学生に問いかけました。
[テーマを提供して感じたこと]
今回、テーマ提供者に名乗りを上げた理由はなんでしょうか。
私は3回目のタテシナソンの時にガイドをやっていました。参加する学生さんのサポート的存在ですね。その時から良いイベントだな、と感じていました。さらに参加する学生さんはみんな熱心にテーマに取り組む。そしてテーマ提供事業者は自分たちの事業についてだけ考えてもらえるという貴重な時間を得られる。すごい事ですよね。そっち側に行ってみたいな、とその時思いました。それで今回手を挙げたという流れです。
ガイドとの違いはありましたか。
全然違いますね。ガイドの時は学生側に立って一緒に考えていくという形でしたが、今回は質問される側です。ある意味緊張しました。質問する側を見ていたので「きっと生産量や売り上げなどの数字は聞かれる」と思って準備しましたよ。今回は学生4チームとプロチーム1組でしたが、プロチームからの質問も緊張しましたね
アイデアを聞いた時の感想はいかがですか。
私が出したテーマの内容が数字を伸ばしたいというものではなく、ちょっと抽象的だったので悩ませてしまったと思ったのですが、どのチームも私の思いを汲み取ろうとしてくれていることがすごく伝わってきました。
特に印象に残っていることはありますか。
今回アイデアを採用したチームの質問時間の使い方ですね。最初の2回は雑談のような普通の会話形式で聞かれました。誰もメモを取らないしパソコンもいじらない。「関さん、なんでリンゴを始めようと思ったんですか?」みたいな。だからこちらもすごく話しやすくて、つい本音がボロボロと出ましたね。でも確信をついてこないから「大丈夫かな」って思っていたら、最後の方で一気に詰めてきました。チームである程度まとまったものを確認してくる感じですね。それでも自分の気持ちをしっかり汲んでくれていたので、嬉しかったです。
[アイデア事業化の進捗状況]
テーマ
ブランディングを成功させるための日本一の称号が欲しい
テーマ
商品の思いが伝わるポストカード(絵本)を作る
現在の進捗を教えてください。
大賞に選んだチームが提案してくれたアイデアを少しアレンジした形にはなりますが、すでに出来上がりました。このチームは私の思いをとても汲んでくれていて、品物が購入者に届くだけでなくそこにこちらの気持ちを伝える事がテーマになっていました。それで絵本という提案だったのですが、できるだけ早く形にしたかったこともありそこをポストカードという形で実現しました。偶然にもアートディレクターの大塚いちおさんにイラストをお願いすることができたんです。とても素敵なポストカードが出来上がりました。
実は昨年注文くださったお客様に第一弾として、手書きのメッセージも添えて発送しました。ポストカードの1枚は、私の思いと注文予約のようなシステムに飛べるQRコードを掲載しています。それに加えてお客様が自由につかっていただける裏面白紙のポストカードも添えて。大塚さんの絵だと知った方は「こんなすごい方が描いている!」と大反響でした。
「絵本」というアイデアを実現したかったのですが、今回はやはり費用や時間などの条件が限られていました。その中で私の「りんごに対する想いを購入者に届ける」という部分を起点にした上で、他の制作物にできないかという検討になったんです。そこで大塚さんにイラストを描いていただいたポストカードになりました。さらに「予約用ポストカード」という形にする事でお客様から先行予約がきます。これには翌シーズンの販売量を計画しやすくしたり、繁忙期を分散させるという意図もあります。
大塚いちお
イラストレーター・アートディレクター
イラストレーターとして広告やパッケージなど、アートディレクターとして広告のディレクションやテレビ番組のキャラクターデザインなど数多くの仕事を手がけている。担当したNHK Eテレ「みいつけた!」で2011年教育コンテンツ国際コンクール「日本賞」幼児部門最優秀賞を受賞している。
進めるのが難しい部分もありましたか。
もう一つ提案してくれていたパウチでの商品化の部分ですね。すごくいいアイデアで実現したいと思っています。ただ、農園の運営をしながらの実現として現段階ではまだ進められていないという感じですね。でも諦めている訳ではありません。これからもう少し調査をして、商品化を実現できるように進めていく気持ちでいます。
ほかにも取り組めそうなアイデアはありましたか。
他のチームのアイデアでしたが、地域全体で立科町をアピールしていくところですね。町外や県外から来た人に「ここに行ったら、こう回って」と仲間が繋いで町の面白い所を案内していくという。一人ではなく町の人と協力してできる事だと思うので、町全体も盛り上がるし来た人も楽しめる。これは進めていきたいアイデアでした。
[タテシナソンを経験して]
他の事業者さんに伝えられることはありますか。
自分の中ではガイドをやったときから感じていたことですが、出てくるアイデアがさらにアイデアを呼んでという場面を目にして勉強させてもらった部分がありました。その中で今回はテーマ提供事業者になり、参加チームの皆さんが自分の会社の為だけに考えてくれるというありがたい環境に身を置いていることを実感しました。そして一生懸命アイデアを発表している皆さんを見て、最後は本当に感動したんです。だから、ぜひこの体験を他の事業者さんにも体感してもらいたい。まずは自分が主役というところを楽しみながらも、新鮮なアイデアをどんどん吸収して課題解決に取り組んでいけるイベントだと思います。
タテシナソンに今後どのように発展して欲しいですか。
すごくいい企画だと思います。ですが、まだまだ認知度が足りません。もっと町の方にこのイベントを知って欲しいですね。2日目のプレゼンももっと見に来て欲しい。町内の事業者の為に学生がこれだけパワーを注いでいるという事を知って欲しいです。
学生さんとはSNSを通じて今でも交流があります。これも町との関係人口を増やす一助になっていることは間違いありません。そういったところに繋がっていることも、もっと知ってもらえたら嬉しいですね。
インタビュアー:原田 寛子