タテシナソンレポート メンター編 ①岡田さん

前回は、タテシナソンのリアル ガイド編 として、参加学生を迎えてから送り出すまでの28時間、立科町の右も左も分からない学生たちをアテンドする「ガイド」さん3名へお話を伺いました。

タテシナソンにはたくさんの人が関わってくださっています。その中でも、「メンター」は、対話による気づきを促し、指導・育成をする役割を持っている人物です。

タテシナソンでは各チームに、アイテムカードとして、メンターと相談ができる時間が与えられています。そこで、考え出したアイデアについて、または、プレゼンテーションの方法について相談することができます。

※アイテム「メンターカード」は使いたい時間にあらかじめ予約をします。

タテシナソンでは、 一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター (AREC)のセンター長を務める、岡田 基幸 氏にメンターを依頼しています。


一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンターとは…

企業が必要とする研究シーズを大学から選び出し、マッチングさせる。企業のニーズを引き出して、大学の研究と融合させる。さらには、会員の交流をベースにして、企業同士のマッチングを行いながら、実に多種多彩な成果を産み出しています。
(引用:一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンターHPより http://arecplaza.jp/


岡田氏には『タテシナソンレポート』と銘打って、タテシナソンのメンターとして学生に伝えていることについて、寄稿いただきました。

岡田 基幸 氏

一般社団法人浅間リサーチエクステンションセンター(AREC)の専務理事や国立大学法人信州大学繊維学部特任教授を務める。

■若者の企画支援が得意!

ハナサカ軍手ィプロジェクト
就コン
信州若者1000人会議


「タテシナソンレポート ~メンターとして学生にお伝えしていること~」

一般財団法人 浅間リサーチエクステンションセンター
センター長・専務理事  岡田基幸 (www.okada.st)

「タテシナソン⁉、ああ、アイデアソンの一種ね」、「学生のお手並み拝見」と思われるのも当然ですが、なぜ、人口7千人の町で、毎年継続できるのでしょうか。理由は簡単、課題提供事業者の期待を超える「解決策」を毎回提案し、事業者や住民に感動を与えているからです。課題解決策のレベルの高さこそが、タテシナソンの真髄です。今回は、短時間で「解決策」を導き出すために、メンターとして、学生にお伝えしていることについてご紹介します。

①まずは、メンバー同士、お互いを良く知る

チーム編成は当日発表され、メンバーはお互いに初めて会った方々ばかり。学校、出身地、年齢もバラバラ。高校生もいます。これも何かのご縁と思い、お互いを良く知り、いち早く信頼関係を構築しましょう。まずは、メンバー全員でゲームをしたり、スポーツをするのがお薦め。

②時間配分に注意

与えられた時間は、初日の午前10時から翌日の午後2時までの28時間。睡眠、食事や移動の時間を考慮すると、実質20時間程度。アイスブレイク、アイデア出し、現場に出向いての調査、解決策の絞り込み、発表の方法や資料の検討まで盛りだくさん。おおよその時間配分をチーム内で事前に決めておきましょう。アイデアの発散は初日の夕方くらいまで、それ以降は、集約していくのが良いと思います。

③事業者の現場や町中に早めに行こう

「立科町に来るのは初めて!」というメンバーがほとんどです。まずは、相談者の現場に出向きましょう。解決策のヒントになるものがきっとあるはず。現場で写真を撮っておくと、プレゼンのときに使えるかもしれません。また、町を散策し、町の空気、風、匂いを感じましょう。道中でお会いした住民の方々にも積極的に話しかけてみましょう。事業者の困りごとだけでなく、住民や町の困りごとの両方を一気に解決できるアイデアが閃くかもしれません。

④事業者の隠れた想いに気づく

 例えば、第1回タテシナソンの課題提供事業者の牛乳専科もうもう 代表 中野和哉さんは、課題として「これまで、冬場は営業してこなかったが、通年営業で経営を安定させたい」を挙げられました。さらに、話を伺うと、創業50年の老舗だからこそ感じることとして、「立科町は里と山にエリアが分かれていて、お互いの課題や悩みを共有できる場があまりありません。僕は里に住みながら山で仕事をしているので、温度差を感じます」と話されています。里と山をつなげたいという中野さんの想いに対しての、チームからの提案に感謝しておられました。

また、第3回タテシナソンの課題提供事業者のマーガレットリフレクパーク  鷹野裕也さんは、課題として「とにかく売り上げを上げる」を挙げられました。実は、鷹野さんには、タテシナソンの企画の前から、「学生と一緒にやりたい、学生とのつながりが欲しい、お互い楽しみながらプロジェクトをしたい」という想いが強くあったようです。学生らしい「遊び心」のある解決策を高く評価し、実施されています。

⑤学生、アマチュアならではの解決策が必ずある

タテシナソンに参加するメンバーは、プロのコンサルタントではありません。プロチームと勝負をしたところで完敗です。(第3回タテシナソンのプロチームの提案は本当に見事でした。)ただ、勝てる可能性がゼロではないのがタテシナソン。徹底的に、「学生、若者の視点」にこだわった解決策に特化し、プロとの勝負の土俵を少しずらすのです。プロといえども、「学生、若者の視点」での解決策は思いつきません。さらに言えば、最良の解決策は、実は、メンバーよりずっと若い小学生がもっているのかもしれません。ご年配のおじいちゃんやおばあちゃんが持っているかもしれません。立科から、電話で、弟や妹、祖父母にヒントを伺ってみるのも良いかもしれません。また、メンバーの方々の、趣味や熱中していることにも着目しましょう。オタクレベルの趣味でもあればラッキーです。そこからのヒントも探りましょう。コスプレの聖地として復活した町もあるくらいですから。

⑥ファシリテーター役を決める

アイデアの発散の段階では、アイデアをたくさん出せた人、あまり出せなかった人といるはず。リーダーシップを取る人、調和型の人など、メンバーの個性にも気づくでしょう。次の解決策の絞り込みの段階になると、どれを採用するか、喧々諤々の議論になります。自身の渾身のアイデアが採用されない場合もあり、険悪な雰囲気になるチームも。お薦めとしては、絞り込みの段階以降は、自らの意見を出さず、メンバー間での意見の調整役、いわゆるファシリテーター役を決めることです。アイデアを一番出した人がこの役を務めるのも一手。議論がどうしてもまとまらない場合に限り、ファシリテーターに一任することに、メンバー全員で事前に合意しておきましょう。また、発表資料の作成者もこの段階で決めて、準備をし始めると良いですね。


この6項目以外にも、チーム個々の事情に応じ、アドバイスを心がけています。 タテシナソンは、回を追うごとに、内容の充実とともに、開催のオペレーションが進化しています。ご興味があれば、第4回タテシナソンには、ぜひお越しください。タテシナソンはどこの自治体でも必ず開催できますよ。人口7千人の立科町でできたくらいですから(笑)


次回は、実際に参加した学生の視点からのレポートを更新する予定です。
お楽しみに。

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