タテシナソンのリアル 事業者編④ 蓼科牛いっとう

インタビュアー 小池 菜月

佐久市出身のフリーライター。2年前に帰郷しライターのほかにキッズダンス指導者やストレッチインストラクターなどの顔を持つ。様々なことに挑戦しながら、日々成長中!

前回までのお話


第1回から前回まで、くりもとさんが各課題提供事業者の方へインタビューを行った模様をお届けしておりました。今回は先輩ライターのくりもとさんからバトンタッチ。私、小池がインタビュアーとして取材の様子をお届けします。

「アイデア」と「マラソン」を掛け合わせた造語「アイデアソン」。あまり耳馴染みのない言葉で、私自身この企画の話で初めて言葉の意味を知りました。

「そんな最先端なイベントを立科町で?しかも今回でもう4回も開催しているの?」と驚きを抱えたままタテシナソンのホームページをクリックすると、確かに“ヤバい”。学生たちだけではなく、このイベントを支えるすべての人の“リアルガチ”が伝わってきました。

■ タテシナソン2022課題提供事業者「株式会社いっとう」角田大徳さん

株式会社いっとう 角田大徳さん

創業:2016年

業態:飲食・畜産・加工

従業員数:正社員11名・アルバイト約30名

タテシナソン2022の課題提供事業者は「株式会社いっとう」。立科生まれ立科育ちで、立科町への愛が止まらない!という代表の角田さん。

そんな角田さんからの課題は「新たなステージを広げるアイデア」。ピンポイントではなく広くて幅のある課題内容に学生たちも奮闘した模様。生まれたアイデアを実現可能なところまでどうやって持っていくのか、参加した学生たちは頭と心をフルに使ってアイデアを出し合いました。

[課題提供事業者として感じたこと]

小池:課題提供事業者として手を挙げられた理由をお聞かせください。

角田:そもそも地元が大好きで、立科町を盛り上げたい貢献したいという思いが強くありました。そんなとき商工会から企画のことを聞き、ちょうどアイデアを求めていた時期だったので良いタイミングだと思い、参加しました。

小池:このような課題内容にされたのは、なぜでしょうか。

角田:当時は飲食店を2店舗経営していたのですが、新業態(畜産業や加工業)への進出も考えておりまして。新しいことを始めるための新しいアイデアが欲しかったため、このような課題にしました。

小池:タテシナソンに参加された前後でイメージの変化はありましたか。

角田:良い意味でイメージ通りでした。学生たちはみんな優秀で、メンターとして篠原さんや岡田さんがいらっしゃり、良い出会いができてとても嬉しく感じています。

小池:2日間学生たちと過ごしてみて、いかがでしたか。

角田:やはり若さが違いますよね。体力もあるし、思考に柔軟性もある。中には奇抜なアイデアを出してくれる学生もいて、自分たちでは思いもつかないようなアイデアが出てくるので面白かったです。学生たちは同じ課題に取り組み、同じ目的に向かって進むので、打ち解けるのも早いなと。

小池:学生たちだけでなく、メンターの方など多くの方と良い出会いがあったとのことですが。

角田:そうですね。タテシナソンを通して町とのかかわりがもっと親密なものになった気がします。役場の方や周りからサポートする大人たちの姿も良い刺激になって、学生だけではない新たな繋がりも嬉しいですね。

[アイデア事業化の進捗状況]

小池:採用されたアイデアの進捗状況はいかがですか。

角田:「りんごを使ったハンバーグソース」の商品化に向けて動いています。ソースのレシピ自体はいっとうで開発し、パッケージデザイン・製造シール・成分表などは、外部の専門家の力を借りながら制作しました。パッケージデザインはりんごをイメージし温かみのあるデザインとなっています。

ECサイトの新規立ち上げも予定しており、サイト上でのソース販売を見据え、商品のブラッシュアップをしているところです。2023年2月には店舗にてテストマーケティングを実施し100名以上のお客様の回答を得ることができました。ソースの出来栄えはとても好評でした。ただ、賞味期限の短さやギフト需要に向けてどうアプローチしていくかなど、もう少し改良が必要ですね。

現在は新店舗の準備に加え、加工場の準備やECサイトの準備など同時進行で進めています。

小池:採用まではいかなかったものの、興味深かったアイデアはありましたか。

角田:そうですね。やはり突拍子もないアイデアは印象的です。最終プレゼンまではいきませんでしたが、「白樺湖でヨガをして、牛糞で作ったペンダントを売る」というのが個人的には面白かったです。アイデアだけではなく、そこに裏付けがあったので良いイメージを受けたのだと思います。イベント系のアイデアにも興味があるのでやってみたいですね。

[アイデア事業化の進捗状況]

小池:今後のタテシナソンに関わる他の事業者さんへ、アドバイスなどがあれば教えてください。

角田:学生たちはどんな課題であれまずはそのお店を知ることから始めます。今回は「アイデアが欲しい!」という広い投げかけだったので、まずはお店を知ってもらわなければ始まらないと思い、実際の売上や具体的な数字などは準備して臨みました。案の定、そのあたりの質問もいくつか聞かれました。具体的な数字を示すことで、学生たちにとっても自分たちのアイデアがどれくらい実現可能なものなのかが少しはっきりするのではないかと思います。

個人的には、最終プレゼンだけではなく途中の案などを知れるのは役得だなぁと。学生たちのアイデアがメンターさんとの意見のブラッシュアップ後、どんな風に変わったのかを見れて非常に面白かったです。熱意ある学生たちが来てくれるので、こちらも熱意を持って望まないと失礼だなと思いました。

小池:次回の課題提供事業者である関さんへ、一言お願いします。

角田:同じ立科町出身で同級生ということで、どんなイベントになるのか今から楽しみです。僕と同じくらい地元への愛が強く、新しいことにどんどん挑戦しているので、また熱いイベントになること間違いなしだと思います!

[取材を終えて]

ライターという職業柄、様々な業種のスペシャリストたちのお話を伺う機会も多いですが、タテシナソンのように学生がこんなにも輝ける場があるのはいいなあ、と少し羨ましく感じました。

全国各地から顔も知らない同世代が立科に集い、2日間で“アイデア”出しから実現可能な形にしてプレゼンまでするのは、正直簡単なことではないでしょう。しかし実際に事業として成り立っているものに対してアイデアを出す喜びと責任感はなにものにも代えがたい経験になると思います。理想と現実、0から1を生み出す苦しみと喜び、その生み出された1をどうやって増やしていくのか・・

参加したすべての人が“リアルガチ”な2日間。次回の開催が早くも楽しみでしかたありません。

文:小池菜月